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Stereotactic radiosurgeryという概念が1951年にLeksellによって提唱されて16)から現在すでに半世紀以上が過ぎ,定位放射線照射 (stereotactic radiosurgery またはradiotherapy,以下STR)は脳・脊髄疾患の治療法の1つとして既に重要不可欠な位置を占めている。腫瘍,血管奇形などの器質的疾患に加えて機能性疾患の三叉神経痛なども治療され始め,症例数も増加し臨床成績も明らかになってきている。一方,多数例のSTRの長期フォローアップデータから不具合事象など新たな問題も注目されてきており4),治療の先進性が強調された時代は過ぎ現在は成熟期に入ってきた。また,STRの基礎をなす物理学上の問題は,技術の進歩に伴って1967年のガンマナイフの開発以後の39年間で非常に進歩したために,現在のSTRは初期のSTRとは隔世の感がある。しかし,三次元画像を元に病巣の位置を正確に照準し放射線を病巣のみに集中させ,周囲の被曝を極限まで抑えて病巣にできるだけ高線量を照射するという基本原理は変わらない。STRに不可欠なCT,MRIを中心とした三次元画像診断装置の解像度,位置精度,コントラスト,高速性が進歩し質的にも機能画像,MR spectroscopy画像が利用できるようになった。また,治療計画用のイメージにPETや三次元血管撮影の画像データを合成することが可能になって,STRの標的病巣の入力はさらに正確になってきている。ライフル銃の精度だけでなく視力向上が射撃精度を改良するように,きめ細かい治療計画が可能な新しい世代のSTRが始まっている。その一方で,100年の歴史がある放射線治療で観察される病理現象が21世紀の今も細胞生物学,放射線腫瘍学,免疫学などの基礎研究の分野で完全に解明されていないため,経験に頼らざるを得ない手探りの部分がまだ残っている。病巣の直達手術に比べ低侵襲で患者にやさしいSTRの利点は,裏返すと,照射前後の組織が得にくいために病理標本,組織培養など病巣の直接的観察データが乏しくなり,画像検査と臨床症状で間接的に治療効果を評価していかざるを得ない面がある。技術分野の進歩に対比すると,治療後の臨床効果と不具合事象に関する病理的解明には未知の領域がまだ多く残されている。
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