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認知症はAlzheimer病(AD)を中心とする変性型認知症と脳血管性認知症(vascular dementia : VD)の2つに大別される。欧米では変性型認知症が大半を占めるのに対し,わが国ではVDが全体の半数を占めている。VDにはいくつかのサブタイプがあるが,欧米では脳塞栓やアテローム硬化を基盤にした多発皮質梗塞による皮質血管性認知症(多発梗塞認知症)が多いとされる。これに対しわが国では,高血圧および慢性脳低灌流を伴う脳小血管病を主因とした皮質下血管性認知症(subcortical vascular dementia : SVD)が多い。SVDはBinswanger病(BD)とラクナ認知症に分けられるが,BDはSVDの主要型であり,広汎な虚血性白質病変を特徴とする比較的まとまった疾患単位を形成している1)。これに対し,ラクナ認知症は,多発ラクナと認知障害との関連性の有無や,併存する白質病変の扱いなど疾患単位としての独立性にまだ問題が多い。
近年,MRIの普及により脳血管障害の画像診断が容易となったことから,SVD,とりわけBDの病態に関する再検証や臨床研究に関心が集っている。しかし,MRI画像を基準にした臨床診断が可能になったことにより,一方で以下のような疑問が提起されている。たとえば,一見,同じような画像を示しても,認知症を示す例と示さない例があること,画像所見などから軽症例や初期例の予知が可能であるのか,あるいはそれらを対象とした予防や治療介入が可能であるのか,などの点である。前者については,ラクナや白質病変がその局在や程度,加齢やリスク要因などの付加因子により,いかに認知障害を示しうるかという病変解析や縦断的研究が必要である2)(別項Pantoni論文を参照)。一方,後者についてはvascular cognitive impairmentやSVDないしBDの診断基準を確立し,軽症群や治療介入が可能な症例群に対して,縦断的な前向き研究をデザインする必要がある3~5)。本稿では,BDの病態および治療戦略の最近の進歩について述べる。
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