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はじめに
ジストニアを遺伝学的な見方から大まかに分類すると,はっきりした遺伝性を示すタイプと,一見すると遺伝性を示さないタイプに大別される。前者を遺伝性ジストニア,後者を孤発性ジストニアと呼び,その正確な割合は不明であるが,おおよそ5%程度が遺伝性ジストニアであるという指摘がある1)。この遺伝性タイプと孤発性タイプの原因がどう異なっているのか,いまだ解答は得られておらず,したがって両者の区分も実際のところはそれほど明確なものではない。おそらく遺伝性の判別が比較的容易であった(特に発症年齢の若い)タイプのジストニアから順に,慎重な臨床医たちによって抽出され,定義され,操作的に遺伝性ジストニアというカテゴリーが確立されてきたというのが実情であろう。このことは,いまだ見い出されていないタイプの遺伝性ジストニアが存在する可能性を示唆するものである。特に,発症年齢が高いなどの理由によって遺伝性がはっきりせず,孤発性として分類されているものがあると予想される。いずれにしろ,遺伝性ジストニアとして,これまでDYT1からDYT15まで15個の遺伝子座が知られている。1980年代から1990年代にかけてヒト遺伝地図などが構築され2),このようなメンデル遺伝性疾患の原因遺伝子を同定することが可能になった。1990年代以降のDNA分析技術の大幅な向上によって,2000年にはついにヒトゲノムの全配列がほぼ解読され3),このようなヒト遺伝性疾患の原因遺伝子同定を推し進める原動力となった。ジストニアでは15の遺伝子座のうち,連鎖解析が行われていないDYT2と連鎖が確定できなかったDYT4を除く13遺伝子座について,原因遺伝子の存在する染色体領域が決定されている。また,そのうちのDYT1のTORSINA遺伝子,DYT5のGCH1遺伝子,DYT11のイプシロン・サルコグリカン遺伝子の3つについては,原因遺伝子であることが確定されている。また,最近になって,DYT12の原因遺伝子としてATP1A3遺伝子が確定されている。さらには,筆者らのグループによって,DYT3の原因遺伝子がTAF1であることが確定された。以下に,各遺伝子座について現状を紹介し,その後に,全体を俯瞰することで,遺伝性ならびに孤発性ジストニアの遺伝研究の今後について考察する。
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