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はじめに-DAVFについて-
特発性硬膜動静脈奇形・硬膜動静脈瘻は,脳・脊髄硬膜血管が存在するところすべてに認められる。その成因には静脈洞血栓症,外傷,ホルモンなどの可能性があるが未だ解明がなされていない。本稿では本症について最近の考え方,治療について述べる。なお,本症には硬膜動静脈奇形,硬膜動静脈瘻など数々の名称がつけられているが,本稿では硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula:DAVF)とした。
静脈洞の病理解剖学的な知識は十分に理解する必要がある。一般的に静脈洞には梁柱があるといわれているが,一方で梁柱がない場合もあるとの見解もあり,現段階では一部海綿状構造を有していると考えたほうがよい。後述する血管内治療では,sinus packingの際に,治療している症例がどの組織型であるかを考えながら治療を施行することが必要である。
1.DAVFの病理解剖学的事項
DAVFの病理解剖学的発生部位では,1)壁自体に血管壁のDAVFがある場合,洞内が2重構造をしていることもある,また2)洞内がDAVFで充満あるいは一部占拠されている場合がある。その上にさらに静脈血栓症が併発して,病因学的には複雑化している。これらの病理・解剖学的事項を念頭に置き治療を行う必要がある18)。
2.発生頻度
発生頻度は正確には不明であるが,虚血性病変の10~15%である。年齢的には40~60歳代に多く,最近ではやや年齢層が上がっている。海綿静脈洞では断然女性に多いが,横静脈洞・S状静脈洞部ではほとんど男女差はない。前頭蓋底では男性に多いことが知られている。
3.症 状
1)海綿静脈洞部(cavernous sinus)
眼球突出,結膜充血,浮腫,雑音聴取,外眼筋麻痺,頭痛,動眼神経麻痺,視力障害
2)横静脈洞・S状静脈洞部(transverse sinus, sigmoid sinus)
雑音の聴取,頭痛,視障害,うっ血乳頭,神経学的巣症状,くも膜下出血,意識障害,痙攣発作,失明など多彩である。
頭痛・雑音聴取は共通するものであり動脈圧迫で消失,軽快するのが特徴である。そのほか,脳幹・小脳梗塞,くも膜下出血(SAH),脳圧亢進症状,片麻痺,意識消失発作,心不全,痴呆,脊髄症などが稀ながら報告されている。Brownによれば,1年間1.8%の出血で,特に出血を起こしやすい型はpetrosal・straight sinusの病変,venous varixを有するもの,leptomeningeal veinに還流するものなどがあるとされる3)。
4.起こりやすい部位
部位別にみると,海綿静脈洞,横静脈洞・S状静脈洞,前頭蓋窩,後頭蓋窩,中頭蓋窩,そのほかテント,下垂体静脈洞付近,大脳鎌付近と分類できる。
5.画像診断
X線写真でも疑うことができる。CTでは診断は困難であるが,眼球突出,皮質静脈還流症例では脳出血,静脈性梗塞,脳浮腫がある。造影CTで蛇行した皮質静脈が描出される。なお,海綿静脈洞部の病変では,造影により上眼静脈,内外直筋に拡張が認められる場合がある(うっ滞性筋症)。MRIではflow void signが認められるがCTと変わらない。皮質静脈還流例での変化があり,造影することで顕著となる。また,MR angiography(MRA)で外頸動脈系からの栄養血管描出を認めることがある。血管撮影では6 vessel studyを行う必要があり,そこでの分類は,文献および基本事項(表1)15)に記す。病態の分類は,危険性を十分に示すため,また治療の適応を決定するために必要である。とくに横静脈・S状静脈洞部のDAVFは分類が多く,新しい分類は静脈の還流に関する事項が入っているのが特徴である。手術での分類では,静脈洞内にAV shuntがあるか,洞内にAVFが入っているかで治療法が異なり,それぞれの医師自身の判断で分類するべきである。現在,われわれはこの分類に静脈塞栓症との合併を踏まえる必要があると考えている(表1)。
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