「精神医学」への手紙
Letter—気分障害や精神分裂病における表現促進の有無について,他
功 刀浩
1
,
南光 進一郎
1
1帝京大学医学部精神科
pp.1238-1239
発行日 1996年11月15日
Published Date 1996/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405905033
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表現促進は遺伝的疾患において世代を経るほど,発症年齢が早くなり重症度が増す現象で,この現象に対応する分子遺伝学的な実体として,筋緊張性ジストロフィー,ハンチントン病などにおいて,原因遺伝子に3塩基繰り返し配列のあることが見いだされた。今村ら2)は,気分障害と分裂病患者で,また林ら1)は分裂病患者で,親子発症ペアを対象に2世代間の発症年齢の差異を調査し,いずれも下位世代における発症年齢の有意な早期化を認め,表現促進の存在を示唆する結果を得たと報告している。
しかしすでに我々3)が指摘したように,下位世代における発症年齢の有意な早期化を認めるためには,調査時の年齢を統制する必要がある。というのは,ある調査時点で罹患している親子は,親世代の調査時年齢(a)は子世代のそれ(b)より当然高いため,仮に親世代の発症年齢分布と子世代の分布とが等しいとしても,親の平均発症年齢(c)のほうが子の平均発症年齢(d)より高く観察される,からである(図参照)。したがってこの種の研究においては,親の発症年齢が子の調査時年齢を超えている場合を除外して分析すべきであろう。
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