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はじめに
激しい社会の変化と社会病理が目立つ環境の中で,子どもたちは様々な型の適応・不適応パターンを表現する。さらに私たちの想像を超える出来事が繰り返しみられ,従前から引き続く,不登校,いじめ,校内暴力,学級崩壊,虐待,心身症などが増加傾向にある。
これらの背景に様々の理由はあれ,社会の規範や許容範囲を越えた現象や“切れる,むかつく,いきなり型”などの短絡・即行,多動や高い脆弱性を示す子どもも目立っている。
日常生活の中で,児童青年期の子どもは,①溢れるエネルギーを望ましい目標に向けて定位させられないこと,②適切な動機づけのもとに意欲を持って取り組める課題,役割や対象のなさ,③彼らのエネルギーを十分に発散・燃焼させる受け皿機能を持つ場所のないこと,④学校・家庭生活で生ずる閉塞感,将来の見えなさやある種の無力感,⑤社会的ルール内在化の未確立,⑥対人的相互信頼関係・共感性の未成熟さ,仲間作りの困難さ,幼さと脆さ,⑦自立の問題などを示している。共通して認められるのは,子どもを取り巻く家庭・学校・地域・社会などに山積する環境問題,一方,子どもの示す短絡性,攻撃性,衝動性,回避性,不耐性,共感性のなさ,先見性の欠如,幼さ,脆弱性なども顕著である。すなわち,子どもたちの認知,情動,衝動制御,言語表現,対人関係の在り方に少なからず問題を認める。
このような現象の正確な把握と理解,すなわち,これらの諸現象を生じさせている要因の解明と問題解決のため,①本人,②家庭,③学校,④地域,⑤社会のそれぞれに内在する顕在化している,あるいは顕在化していない複雑多岐な問題を明らかにして,本人・家庭を中心に据えて,教育・福祉・保健・医療・司法などの切り口や取り組みを異にする多くの関係分野が今までのアプローチに加えた新たなる対策・支援・対応を短期的・中期的・長期的に行うことが必要となる。
児童青年精神科医療は大学病院,子ども病院,国公立精神病院,私立精神病院,児童青年精神科病院,クリニック,児童相談所,情緒障害短期医療施設などが主として対応している。
すでに,多くの児童青年精神科医療の在り方,活動状況や提言がなされている1〜9,11,14〜19)。
今回,筆者は日頃の医療の実践の中から,公立児童青年精神科病院としての都立梅ヶ丘病院の立場から児童青年精神科医療の現状と課題について述べてみたい。
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