巻頭言
過眠症と過眠性障害者
本多 裕
1
1財団法人神経研究所
pp.800-801
発行日 1999年8月15日
Published Date 1999/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904815
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- 文献概要
・居眠りと日常生活
居眠りに対し日本人は比較的寛容である。電車の中での居眠りは日本独特の光景といわれているが,外国のようにすりや強盗の被害に遭う危険も少ない平和国家のシンボルでもある。しかし,商談中とか大切な会議中に眠りこんでしまうと社会的信用を失うし,自動車,貨物船,航空機などの乗り物や大きな機械設備などを運転中に居眠りすると重大な事故につながる。体の睡眠・覚醒リズムを無視した勤務計画を立てると作業中に起こる眠気のために集中力が低下し事故などが起こる。大型タンカーのエクソン・パルデー号座礁による海洋油汚染やチャレンジャー号の打ち上げ失敗など大きな教訓がある。
過眠と不眠は表裏の関係にあり,夜間の睡眠不足や不眠が続くと日中の眠気,集中力低下,気力の低下などの原因となる。最近のオーストラリアでの調査によると,一般人口の14%が,日中の眠気に悩まされているという。南ヨーロッパでは午後2〜3時間眠るシェスタという習慣がある。日本でも午後短時間の昼寝をすると作業能率が上がり,夜の睡眠も改善するという最近の研究報告がある。作業能率を上げ,仕事の成果を改善するためにも,午後昼寝をする時間と設備を職場に備えることが望ましい。
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