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■はじめに
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は,死者6千名以上,家屋倒壊20万棟,最大避難者数30万人,被害総額10兆円というまさしく未曾有の災害となった。ちょうどその1年前に米国ロスアンジェルス近郊で起きたノースリッジ地震は米国災害史上最悪の災害となり,被害総額は3兆円に及んだ。しかし,死者57名,家屋倒壊2万棟,最大避難者数2万人という統計値が示すように,災害規模は桁違いである。圧倒的な量的違いは問題の質を変化させるといわれる。ノースリッジ地震では,米国の災害対応能力の高さが証明されたが,それでも阪神・淡路大震災規模で機能しうるかはまったく未知数なのである。既定事実として阪神・淡路大震災があり,着実に復旧・復興が進んでいる現実に直面すると,それが当然という印象も生まれる。しかし,こうした活動はどれもこれまで前例のない課題へのまったく新しい取り組みであることを忘れてはならない(林3))。
精神保健の分野でも,阪神・淡路大震災は我が国で初めて災害後の心的外傷後ストレスの存在とそれへのケアの必要性が認識された災害となった。兵庫県をはじめ様々な機関によって種々のパンフレットが用意され,1月23日の臨床心理士会の活動をかわきりに被災地内外での相談電話活動も始まった。また1月26日以降保健所に精神科救護所が開設され,多くの精神科医が参画して,地域内のケア拠点の役割を果たしている。震災からまもない段階では外部ボランティアを中心に,その後は地元のボランティアを中心にした避難所での巡回相談もなされた。さらに6月1日には兵庫県精神保健協会こころのケアセンターが設置され,5年間にわたる継続的な活動が行われることが制度的にも確立した。
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