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■症例
36歳,女性,無職。
家族歴・既往歴 特記すべきことはない。
生活歴 同胞3人で姉,妹がいる。12歳の時に母親が脳出血にて死亡。高卒後就職するが発病し退職,以後定職にはついていない。24歳の時に父親が心筋梗塞にて死亡。
現病歴 16歳の時に祖父の死,父親の大けがのあと不眠・多弁の躁状態となり入院した。3週間で安定し退院したが,2週間後うつ病性昏迷状態となって再入院し2か月間の療養を続けた。その後2年間外来通院はなく高校を卒業し就職した。
19歳の時に暴行を受けたと訴えて躁状態となり2か月半入院治療を受けている。20歳の時に誘因なく昏迷状態となり入院後躁状態となる。多弁で易刺激的であり混乱して裸になる行為がみられていた。症状軽快して退院し1年ほどはアルバイトをしていた。
この後も多弁多動状態・将来を悲観して不安抑うつ状態になるなどと頻繁な気分の変動がみられ入退院を繰り返していた。このころ薬物はhaloperidol 9mg,levomepromazine 150mg,amitriptyline 75mg程度で安定していた。電気けいれん療法も併用していた。
28歳の時以後は気分の変動が激しく薬物が奏効せず,8年間にわたって入院治療を受けている。前記薬物以外にchlorpromazine,propericiazine,lithium carbonate,carbamazepine,sulpiride,maprotiline hydrochloride,amoxapine,sodium valproate,acetazolamideが用いられた。
34歳ころ消防・警察へ電話を頻繁にかける。治療者への暴力,夜間覚醒して騒ぐなどの行為が続く。この当時薬物はlevomepromazine 300mg,haloperidol 9mg,ほかにcarbamazepine 700mg,primidone 2g,acetazolamide 600mgを1日量として使用していた。しかし安定せず,primidoneを中止してreserpine 0.6mgを付加しやや鎮静化がみられた。しかし不眠が連日続き,夜間に非常ベルを押すという行為が認められてきた。自分の言い分を通そうとして暴力行為が続き,放尿・弄便までみられた。睡眠がやや安定したかと思うと,食事にソース・?油をかけて食べては吐くようになったりした。この間の行動についての健忘はない。
acetazolamide,levomepromazine,reserpine,haloperidolを中止としzonisamide 100mgを付加し以後400ngへと漸増した。zonisamideを使用し始めてからは夜間やや動きがあるも日中は感情面では穏やかになり睡眠が安定してきた。100mgずつ漸増するにつれ易刺激性・易怒性がなくなり問題行動がみられなくなってきた。金銭に無頓着であったのが計画を立てての買い物が可能になり,更衣・洗濯などもするようになって7年ぶりに姉宅へ外泊をした。以後2年間気分の変動はみられていない。しかし本人に不安があり,入院は継続している。現在使用している薬物は,zonisamide 500mg,carbamazepine 600mg,propericiazine 20mg,nitrazepam 10mgである。
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