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はじめに
急速に進むわが国の高齢化を背景に,高齢者の双極性障害患者数も年々増加しており,日常臨床でも双極性障害の高齢患者に遭遇する機会は増えている。高齢者の双極性障害には以前から双極性障害と診断され,高齢に至ったもの(若年発症),以前はうつ病と診断されていたが,高齢になって躁病エピソードが出現し,診断が変更となったもの(コンバーター),高齢になってはじめて双極性障害を発症したもの(高齢発症)がある5)。高齢者の双極性障害はより若い世代の双極性障害と比べて双極Ⅱ型障害の割合が多くなることが報告されているが16),高齢患者ではうつ病相への傾性が強くなることから,若年発症で双極Ⅰ型障害の診断がなされていた患者でも高齢になると躁病エピソードは少なくなり,軽躁とうつ病エピソードが主体の双極Ⅱ型の経過となることが多い16)。むしろ高齢になって発生した躁病エピソードは他の要因に影響された二次性の躁状態(secondary mania)である可能性が示唆される。そして二次性躁病の原因,または臨床上躁状態とみられる病像の背景として認知症の存在を念頭に置く必要がある。
今回は双極Ⅱ型障害がテーマであるが,高齢者の双極性障害を対象とした調査・研究において,双極性障害をⅠ型とⅡ型に分けてアウトカムを出すことはほとんどないため,患者の実態や治療における高齢者の双極Ⅱ型障害に限定したエビデンスは国内外ともにきわめて乏しい。しかし上記の通り,高齢者の双極性障害においては双極Ⅱ型の病態が多いため,今回紹介する先行研究における高齢者の双極性障害は,その多く(少なくとも半数)が双極Ⅱ型であると考えて大きく外れないであろう。ここでは高齢者の双極性障害について,より若い世代の患者との臨床的違いと認知症との関連性について解説する。
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