「精神医学」への手紙
Letter—運動障害と薬物治療—丸井論文に対する意見
藤本 直
1
1真光園
pp.673
発行日 1995年6月15日
Published Date 1995/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903898
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本誌昨年10号掲載の丸井ら2)の試みた頸部前屈に対する理学的治療法は,今後,同様の姿勢異常を呈した患者にも応用できる方法と思われ,興味深く読ませていただいた。
さて,著者らはこの症例にみられたantecollisを「遅発性ジストニアとみなさざるをえない」としていますが,その点に関して疑問があります。神経遮断薬による治療が一般化して以来,患者に起こってくる種々の不随意運動や姿勢異常は,患者が服用している薬剤のせいにされる傾向があります。遅発性ジストニアもその診断基準の1つにジストニア発症以前の抗精神病薬による治療歴が挙げられています1)。しかしこれらの運動障害はもとからあった精神疾患の一部分症状である,という考え方もあります。Rogers3)は重篤な精神疾患患者100人の運動障害について調査しています。それによると,神経遮断薬による治療が始まる1995年より前に,異常な屈曲姿勢をとっていた患者が28人おり,その中には顎が胸骨に達するまでに頸部の前屈を呈していた患者,臥位でも頭部が枕につかない患者も記載されています。
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