「精神医学」への手紙
Letter—『吃音』の定義と原因の解釈—河田論文に関連して/Letter—「反復性短期うつ病」について—仙波論文を読んで
苅安 誠
1
1福井医療技術専門学校言語療法学科
pp.890-891
発行日 1994年8月15日
Published Date 1994/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903720
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吃音は,ことばの始めの音・音節の繰り返し(タたまご),音の引き伸ばし(SSSさかな),ブロック(あ・・たま),といった非流暢な発話を主症状とする小児の言語障害である1)。脳損傷2,3)や精神分裂病7)では非流暢な発話を認めるが,語や語句の繰り返し,言いよどみなど,吃音とは質的に異なる言語症状を呈する。河田ら5)の症例は,脳の器質的異常を認め,発話運動にぎこちなさを示し「第1語発語障害」があり,L-DOPSが有効であったことから,パーキンソン症候群による運動障害性構音障害6)と考えるのが妥当であろう。
また,吃音の原因について,吃りの真似や利き手の矯正を引用しているが,これらは古典的な学説であり,実証するデータはない1)。吃音は,症状に波があり,歌唱時などには出現しないことから,一貫した病態を呈する運動障害性の発話異常とは本質的に異なる4)。したがって,単独では発話異常を来さない程度の発話運動の協調不全が言語・社会環境に伴うストレスによって表面化したもの8)ととらえるのが,我々の臨床経験とも合致する考え方である。
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