動き
「第2回多文化間精神医学ワークショップ」印象記
五十嵐 善雄
1
1二本松会上山病院
pp.330-331
発行日 1995年3月15日
Published Date 1995/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903848
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1993年12月に神戸で開催された第1回ワークショップに引き続き,第2回目は同じ港町の横浜,神奈川県民ホールで1994年10月1日開かれた。昨年のテーマは,「多文化社会と心の問題」であったが,国民総人口の1パーセントを外国人が占めたことから今年は「外国人労働者とこころ」をテーマとして選択された。特別講演として大江健三郎氏をお迎えしたこともあり,シンポジウム開始以前から会場はほぼ満席となった。
午前中に行われたシンポジウム「外国人労働者とこころ」は,山形大学精神科の桑山紀彦氏が司会となり,5人のシンポジストがそれぞれの立場から日本における外国人労働者の姿を報告してくれた。精神科医阿部裕氏は,「外国人労働者―その精神医学的概説」と題して主に日系ラテンアメリカ人労働者について発表された。もともと氏は,ラテンアメリカの文化に造詣が深く,たまたま自治医大周辺に就労する日系ブラジル人が多いことから豊富な臨床例を通して外国人労働者の特性をまとめられた。氏によれば,外国人労働者は,農村の花嫁や中国帰国者,難民たちとは異なり,必ずしも目本の文化,社会,習慣を受け入れ,日本に適応することを余儀なくされているわけではない。仕事に従事するのに困らない程度に日本の生活様式を受け入れればよいのであり,いざとなれば帰国することも可能であることを考慮に入れておくことが,彼らに精神障害が生じた際の治療の指針となると語られた。
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