動き
「第16回多文化間精神医学会」印象記
野内 類
1
,
桂川 修一
2
1中央大学文学部
2東邦大学医療センター佐倉病院
pp.924-925
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101495
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第16回多文化間精神医学会(Japanese Society of Transcultural Psychiatry)は,張賢徳大会長(帝京大学医学部付属溝口病院精神神経科教授)のもと,2009年3月27,28日の2日間にわたり,神奈川県川崎市内の川崎市産業振興会館にて開催された。本大会のテーマは「民族問題とは何か?―アイデンティティの多文化間相互理解をめざして―」であった。会期中は晴天に恵まれ,駅から会場へのアクセスもよく,大会の参加者数は約200名であった。本大会の一般演題数は15,シンポジウムは3つあり,ワークショップは1つ行われた。
本大会では,特別講演が2つ設定されていた。大会1日目の特別講演は,アイヌ民族舞踏家の酒井美直氏の「AINU PRIDE―私の生きる道―」であった。現在,アイヌ人としての誇りを持っていると高らかに語れる酒井氏だが,アイヌ人であることが誇りと言えるようになるまでには長い道のりがあったことを率直にお話していただいた。また,アイヌ人にとって本当に必要なことは,アイヌ否定や自己否定をせず,経済的に自立していくことだと述べられた。大会2日目の特別講演は,風祭元先生が「多文化間精神薬理学―その概念と精神科医療における課題―」という内容で講演された。精神疾患に対する薬物療法といえば,文化普遍的な治療法であり,生物学的にのみ考えていけばよいと考えられがちである。しかしながら,薬物療法を行う際には,それぞれの国や民族の特性や医師の処方パターンや行政的要因などの文化的要因が複雑に絡みあうことが報告された。
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