動き
「第8回多文化間精神医学会」印象記
阿部 裕
1
1順天堂大学スポーツ健康科学部
pp.914-915
発行日 2001年8月15日
Published Date 2001/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902482
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「文化・風土と癒し」を基本テーマとした,第8回多文化間精神医学会が横浜の神奈川県民ホールで,2001年2月16,17日の両日開かれた。まだこの学会が生まれてほやほやだったころの,第2回多文化間精神医学ワークショップがちょうどここで,秋晴れのもとに開催され,特別講演としてノーベル賞受賞直前の大江健三郎氏をお招きしたのを記憶している。同年の春,山形で開かれた第1回のこの学会から7年,ようやく多文化間精神医学という言葉も市民権を得てきたように思う。最近では,多文化共生という言葉も頻繁に新聞や雑誌に使われ,隣近所に住む外国人と挨拶を交わすのも日常のこととなっている。
そもそも,この学会が創設された経緯は,1980年代後半に増えた,インドシナ難民,中国残留孤児,外国人労働者,外国人花嫁などが抱える多文化葛藤に対して,我々精神医学や心理の専門家がいかなる形でサポートが可能なのか,という素朴な疑問に端を発し,そこから出発したのであった。だが実践的な支援だけでは底の浅いものになってしまうため,医療人類学や文化人類学からの多文化間精神医学への理論的意味づけが必要であった。実践と理論,この両輪がうまくかみ合うことが,この学会の発展にとって不可欠と考えられた。
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