Japanese
English
研究と報告
「Frégoliの錯覚」を呈した精神分裂病の1例
A Case of Schizophrenia with “Illusion of Frégoli”
堀 孝文
1
,
松坂 尚
2
,
今井 公文
2
,
鈴木 利人
1
,
白石 博康
1
Takafumi HORI
1
,
Hisashi MATSUZAKA
2
,
Koubun IMAI
2
,
Toshihito SUZUKI
1
,
Hiroyasu SHIRAISHI
1
1筑波大学臨床医学系精神医学
2筑波大学付属病院精神神経科
1Department of Psychiatry, Institute of Clinical Medicine, University of Tsukuba
2The University of Tsukuba Hospital
キーワード:
Illusion of Frégoli
,
Schizophrenia
,
Obsession
,
Participation
Keyword:
Illusion of Frégoli
,
Schizophrenia
,
Obsession
,
Participation
pp.367-373
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903641
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【抄録】 「Frégoliの錯覚」を呈した精神分裂病の15歳女子例を報告した。13歳頃から洗浄強迫が認められ,その後「F」という青年に対しての妄想知覚を認め,次第に「F」を迫害者として定位するようになった。ついには「F」が様々な人になりすまして本人の周囲に出没し,「Frégoliの錯覚」を呈するに至った。本例は「Frégoliの錯覚」の典型的な例と考えられた。本例において洗浄強迫は,単に汚れに触れることを回避していたのみならず,人間同士の「触れ合い」を回避するという,患者と世界の間における患者のあり方を現していると考えられた。本例は「自己の個別化の危機」が根底にあり,「汝」の他者性の不成立の結果,個々の「汝」を認識できなくなった事態と,未開人の思惟形式に特徴とされる融即の判断(jugement par participation)が「Frégoliの錯覚」の発展に深くかかわったものと考えられた。
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