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シンポジウム 精神障害者の権利と能力—精神医学的倫理のジレンマ
[指定討論]精神医療における倫理的ジレンマ—若干の考察
The Ethical Dilemma in Psychiatric Practice: some considerations
広田 伊蘇夫
1
Hirota Isoo
1
1同愛記念病院
1Doai Memorial Hospital
キーワード:
Sich-Zeitigung
,
Disclosure requirement
,
Compulsory treatment
Keyword:
Sich-Zeitigung
,
Disclosure requirement
,
Compulsory treatment
pp.891-894
発行日 1993年8月15日
Published Date 1993/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903505
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■説明から同意——時熟ということ
最近,我が国の医療現場においても,癌の告知問題に強い関心が向けられてきている。受療者の権利のひとつであるinformed consentが医療者にも日常的当為として認識されつつあるとみてよい。殊に手術を行う外科医は職業上の注意義務の無視といった法的問題もからみ,病名,術式,その効果と見通し,考えうるリスク,術後の治療,代わりうる治療法などを精細に説明する姿勢を持ち始めている。
ただ,こうした説明が受療者の同意にただちに結びつくとは限らないのが医療現場の実態である。一般診療科の場合,緊急事態(その範囲,程度についての論議は省くとして)を除けば,ほとんどの受療者は同意能力があり,提起された説明を自分なりに理解しえている。が説明を熟知し(informed),評価したにかかわらず,驚きや不安,そして悩みがつきまとい,同意に至るに日数を重ねてゆく。いうならば困惑と思料を繰り返しつつ,やがて得心した同意に至るというのが,例えば癌の告知を受けるという状況に直面した際,多くの病める人間がたどる実像と私には映る。そこで総合病院に勤務する精神科医は—私もそのひとりだが——説明から同意に至るこの期間,しばしば外科医の依頼を受け,受療者に対する精神的援助者という機能を果たすこととなる。
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