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第4回日本総合病院精神医学会総会が,福岡大学精神科の西園昌久教授の会長のもとに,福岡市都久志会館と隣接する福岡ガーデンパレスにおいて,1991年11月16,17日の2日間にわたって開催された。参加者は,事務局によると360人とのことであった。プログラムをみると講演は4会場で行われ,会長講演1,特別講演1,シンポジウム1,ワークショップ3,症例研究3,一般演題60,ポスター発表13であった。
会長講演は「リエゾン精神科医の条件」のテーマでおよそ次のような内容であった。まずリエゾン精神医学へのニーズについて,福岡大学精神科の調査結果をもとに以下のように述べられた。すなわち,福岡大学病院内科病棟に入院中の患者192人について,DIS(Diagnostic Interview Scale)を用いて診断したところ,全体の50.5%に,某私立病院では70%近くに,某国立病院の喘息外来患者の35%に,それぞれ精神医学的診断のつく問題点が認められた。したがってニーズは高いものの,医療供給体制における政治・経済モデルの保守性,精神科医自身のあり方などに問題があり,スムーズな対応が阻害されていると述べられた。問題点を改善するために必要な精神科医の資質としては,基本的態度として当該患者の主治医になることではなく,supportive medicineを実施することである。そのためには人間の心理や行動を力動的に理解する能力,面接技法,他科スタッフとその科の医療について対話する能力などが必要であり,それに卒前・卒後教育が重要であると指摘された。今後医療は,高度に技術化し,それとともに無機質化の方向に進むであろうが,リエゾン精神科医は医療のヒューマニゼーションを担う者であり,医師であると同時に精神療法家,教育者でもあり,その活動はこれまでの精神医療の閉鎖性を切り拓くものであろうと熱っぽく語られた。
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