Japanese
English
連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ
皮膚寄生虫妄想&腸寄生虫妄想
Delusional Parasitosis
渡邊 弘
1
,
濱田 秀伯
1
Hiroshi WATANABE
1
,
Hidemichi HAMADA
1
1群馬病院
1Gunma Hospital, Takasaki, Japan
キーワード:
Delusional parasitosis
,
Delusion
,
Old age
Keyword:
Delusional parasitosis
,
Delusion
,
Old age
pp.697-699
発行日 2011年7月15日
Published Date 2011/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101924
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概念
皮膚に小さな生物,寄生虫がつき,この虫が動くために掻痒感,痛みが発生すると確信する幻覚妄想状態を皮膚寄生虫妄想(Dermatozoenwahn)という。寄生虫は皮膚に限らず,内臓をめぐったり,腸内を移動したりする知覚異常を伴うので,腸(内)寄生虫妄想(Enterozoenwahn)と呼ばれることもある。スウェーデンの精神科医Ekbom KAが1938年に発表したことから,エクボム症候群とも呼ばれる。
フランスの皮膚科医Thibierge Gが1894年に虫恐怖acarophobieと記載して以来,今日に至るまでさまざまな名称で呼ばれてきた。Conrad Kは幻覚症に近縁の慢性幻触症としてBonhoeffer Kの外因反応型の中に位置づけている。これに対してFleck Uは,幻覚というより錯覚の妄想様加工だとしている。一方,Huber Gは体感幻覚の前段階とみなし,体感異常型に近縁な遅発統合失調症と考えている。このようにその本態を幻覚(幻触)とみるか,妄想とみるか,それとも異常感覚に対する妄想解釈を伴う心気症とみるかなどの議論が絶えない。
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