巻頭言
うつ病診療の一問題
町山 幸輝
1
1群馬大学医学部神経精神医学教室
pp.572-573
発行日 1990年6月15日
Published Date 1990/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902851
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ここ1年ほどの間に私は数例のうつ病患者について相談を受けた。それらの症例は神経症性,反応性,単極性うつ病などの診断で治療を受けていたが,いずれも十分には治療に反応せず,あるものはそのためすでに休職中であった。診察時詳細に病歴を聴取すると,全例が既往にうつ病期に加えて軽躁病期を有し,双極性障害(双極Ⅱ型)であることが明らかになった。つまりどの症例でも既往の軽躁病が精神科医に見逃されており,それが不適切,不十分な治療につながっていたわけである。
たまたまこの1年間に集中して起こった以上の経験は,私にとってかねて気になっていた双極性障害に関する問題を改めて考えさせる契機となった。ここでは《なぜ精神科医が軽躁病を見逃したのか》を中心にして私見を述べてみたい。
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