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平成16年度からの医師の初期研修で精神科が必修科目となりました。この過程において多くの先輩諸氏がご苦労なされ,まだ不十分なのかもしれませんが,このような形となったのは大変すばらしいことと思います。日常の臨床場面で他科の先生方の精神障害への理解の乏しさに落胆することがあります。また,患者さんの問題よりも,接し方に問題があるのではないか,と感じることも少なくありません。やはり,それを改善していくにはできるだけ若い時期に精神障害の患者さん方に接していただくのが大切でしょう。このような研修を通して若い方々の精神疾患への理解が進み,精神科以外の先生方に適切に初期の対応を行っていただけることを期待しております。
十数年前の話です。地域の単科精神病院に勤務していたとき,その地域の中核的総合病院から高齢男性をご紹介いただき入院治療したことがあります。その方は近県の方で肝機能障害と肺炎で入院しておられましたが,大柄でしっかりとした体格の方でした。入院して二,三日してだと記憶しておりますが,病室においてベッドでバリケードを築き,点滴台を武器に多くの「敵」と戦い始めてしまったのでした。電話連絡を受け,入院を受けることとしました。奥様と主治医の内科医とともに拘束されて救急車で来院されました。情報からせん妄が最も考えられました。そこで内科医にはせん妄の可能性が高く1週間で落ち着くと思うので,その後はまたそちらで身体疾患の治療をしてください,とお話ししました。そして感謝されただけでなく,ご了解を得た,と記憶しております。奥様は心配げで,また私にもその内科医にも申し訳なさそうな表情をされておられました。内科医は往診にはいつでも来るということも約束してくれました。
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