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精神医学における日本の業績
井村恒郎の業績
The Works of Prof. Tsuneo Imura
野上 芳美
1,2
Yoshimi NOGAMI
1,2
1花クリニック
2たかつきクリニック
1Hana Clinic
2Takatsuki Clinic
pp.681-686
発行日 2001年6月15日
Published Date 2001/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902452
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はじめに
井村恒郎(1906〜1981)は昭和初期の社会不安のなかで悩み多い学生生活を送った。高校は理系だったのに,西田幾多郎教授を慕って京大哲学科に入り,カント哲学を専攻した。カントの生物哲学は後年に井村の脳病理学への関心に影響を与えることになったが,最終的には哲学に失望し,医学を通じての『人間研究』のため,将来精神医学を専攻する心算で,改めて医学部に入った。東大医学部卒業後は母校の精神科教室に入り,第二次大戦前には脳病理学(神経心理学)で優れた業績を挙げた。戦後には新フロイト派の文献に触れ,力動的精神医学の啓蒙を行い,やがて精神分裂病の心因論から家族研究へと発展し,輝かしい業績を残した。すなわち,井村恒郎には脳病理学と精神病理学との二つの主要関心領域があった。この二つの領域を代表する尊敬すべき先人として,日大の教授室にJohn Hughlings JacksonとHarry Stack Sullivanの肖像を掲げていた。井村の学問上の特質は鋭い先見性,深い思索,実証を重んじようとする態度だった。
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