追悼 井村恒郎先生を偲ぶ
井村恒郎教授と「精神医学」発刊のころ
懸田 克躬
1
1順天堂大学
pp.111-112
発行日 1982年1月15日
Published Date 1982/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203372
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この「精神医学」誌が誕生する上でひとえにその努力に負うところが多く,且つ初期の編集委員のひとりでもあった井村教授が亡くなられた。8月22日のことであった。葬儀は日本大学精神医学教室葬として,野上教授が葬儀委員長となり,9月12日青山葬儀所において営まれた。葬儀は神式で,いかにも井村教授にふさわしい清楚な御葬儀であった。しかし,私自身では,永いご病気の間ご無沙汰をしていたせいであろうか,まだ,いまになっても井村教授が亡くなられたという実感が湧いてこないでいる。井村教授の心中をお察したつもりで意図的にお目にかからないでいたのだが,もう会う機会は永遠にないのだぞという思いを新たにしてみるといまさらに臍を噛む思いである。しかし,それも今となっては及ばない繰り言に過ぎまい。
井村教授は昭和9年に東京大学を卒業されて精神科教室に入局されたのだが,医学部入学の前に京都大学文学部の哲学科を昭和4年に卒業しておられる。哲学科を卒業してから更に医学部に入りなおされるに到った経緯や精神医学を専攻することに定められるまでにはいろいろと悩まれたことだと思うが,教授の口から直接にうかがうことはなかった。
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