巻頭言
精神医学の臨床教育について
西村 良二
1
1福岡大学医学部精神医学教室
pp.1014-1015
発行日 2000年10月15日
Published Date 2000/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902293
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精神医学の臨床は,たいへんに魅力的で,やりがいのある人間的な営みです。人間を観察すればするほど,ますます人間を理解したいとの想いに誘われるのは無理もありません。しかし,私がはじめて精神医学の授業を受けた時の失望感はいまだに忘れられません。医学生の頃,私が受けた臨床科目のうちで最低の成績だったのは,実は精神医学だったのです。精神医学の症候論の講義などは,まったく退屈で,最低の気分でした。「人間を深く理解したい」という青年特有の,非常に大きな期待を抱いて授業に臨んだだけに落胆してしまったのでした。
そうした私が臨床精神医学へと導かれていったのは,精神医学の成績が最低だったので,「なにくそ」と努力したせいではありません。精神医学を選択した動機は別にあるのですが,それはともかく,精神医学の臨床に自分を捧げようという決心を後悔したことは,現在までにあまりありません。
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