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本誌における前回のアディクション特集は,樋口進先生による2018年2月号の企画「多様なアディクションとその対応」であり,約6年前に遡る。その後もアディクションに関しては,精神科医療,そして世間一般においても依然高い興味と関心が寄せられており,ICD-10からICD-11への移行に伴うアディクション概念の変化にも注目が集まっている。さらに,2020年以来長期に及んだ新型コロナウイルス感染症パンデミック(コロナ禍)による生活環境や対人関係の変化,リモートの普及,景気の後退は,さまざまなアディクションを発症するリスクを高めている可能性がある。以前に世界保健機関(WHO)が実施した自殺者の調査では,物質関連障害は気分障害に次いで高頻度でみられたというデータがあり,コロナ禍においてわが国の自殺者減少傾向が下げ止まり上昇に転じた背景には,アルコールの乱用と未治療うつ病患者の潜在的増加が影響している可能性がある。また,大麻を中心とした違法薬物乱用者および市販薬の常用量依存者の増加傾向も憂慮すべき事態である。
アディクションの概念は,近年の精神医学において急速な拡大をみせているが,それは物質依存以外に,行動嗜癖や関係依存といった多様な概念が含まれるようになった点が大きいだろう。統合型リゾート施設(IR)実施法とともにギャンブル等依存症対策基本法の制定がされたが,パチンコや競馬・競艇といった従来型のギャンブルに加え,スマートフォン(以下,スマホ)などからアクセスするオンライン・カジノの広がりも看過できない。また,インターネット・ゲーム依存やスマホ依存の広がりも然りである。行動嗜癖としては性的アディクションや摂食障害の問題にも注目が集まっている。
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