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はじめに
アルコール使用障害は,飲酒を継続することで徐々に依存が形成・進行し,自身の精神的・身体的健康に悪影響を与え,最終的にコントロール困難な依存症に進行していくという特徴がある。そのため,病状が進行する前に,アルコールの有害な使用を行っている段階から早期発見・早期介入を行い,依存に至る進行を予防することが重要であり,近年においては早期介入を念頭に置いた減酒治療やブリーフインターベンション(飲酒行動に変化をもたらすことを目標とした短時間の支援)が重要視されている1)。
また,アルコール使用障害は本人の深刻な健康問題のみならず,飲酒運転,暴力,虐待,自殺などの重大な社会問題を生じさせる危険性があり,公衆衛生上依然として大きな問題となっている。2021(令和3)年3月に厚生労働省が取りまとめた第2期アルコール健康障害対策推進基本計画2)においても,保健所や精神保健福祉センターなどの相談機関,かかりつけ医,従来アルコール使用障害の治療を実施していない一般の精神科医療機関,地域の救急医療などを担う総合病院,専門医療機関,自助グループなどが連携を促進し,包括的な対策を行う必要性が明記されており,専門医療機関以外でもアルコール問題に対する早期発見・早期介入が求められている。
さらに,アルコール使用障害の患者は必ずしもアルコール問題についての対応を希望して医療機関や相談機関を受診・相談するとは限らない。たとえば,肝障害,食道静脈瘤,膵炎,酩酊時の転倒による外傷など,アルコール使用障害の合併を想起した場合においては,あらゆる治療機関や相談拠点がスクリーニングテストを用いてアルコール問題の有無や重症度を評価することは非常に重要である。
本稿ではアルコール使用障害やアルコール問題に関連した代表的なスクリーニングテストとして,国際的にも認知され,実際に臨床や保健指導の現場において広く使用されるCAGEとAUDITを取り上げる。
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