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はじめに
誰にでも生じる症状である不安は,精神健康調査票(GHQ)などの精神疾患のスクリーニング用の評価尺度や,状態・特性不安検査(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)やZungの自己評価不安尺度(Self-rating Scale for Anxiety:SAS)などの全般的な不安症状の評価尺度など,疾患非特異的な評価尺度が多数存在するが,それらについては他稿に譲る。
本稿では,パニック症(panic disorder:PD)の診療で役立つと筆者が考える症状評価尺度として,PDに特化したパニック症重症度評価尺度(Panic Disorder Severity Scale:PDSS)1)とパニック発作・広場恐怖評価尺度(Panic and Agoraphobia Scale:PAS)2)を,そして長年使用されてきたハミルトン不安評価尺度(Hamilton Anxiety Rating Scale:HARS)3)については併存症を診るためのツールとして紹介する。そして,それらの使用目的とタイミング,どのように使いこなすかなどについて,大学病院ではなく精神科クリニックでの実臨床に即し,筆者の経験を基に,診療のコツのようなものをお伝えしようと思う(残念ながら,紙幅の都合もあり,実際の評価尺度は省略する)。
なお,より簡便な評価尺度(たとえば,パニック発作問診票Panic Attack Questionnaire-Ⅳ:PAQ-Ⅳ4)など)もあるのに,どうしてPDSSとPASを選んだかという理由は,両方とも医師用と患者用の2つがあり,それぞれの日本語版での信頼性および妥当性が検証されている1, 2)からである(当然,患者用を使用する)。また,3つとも約15分以内に評価できる点も実臨床的であろう。読者の皆さんの多忙な臨床現場において一助となれば,幸いである。
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