- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
うつ病は非常にありふれた疾患であり,日本人の約15人に1人が一生のうちにかかるとされている1)。このなかには,自らはうつ病と認識せず一般診療科を受診する患者も多いため,当該診療科において適切な自記式評価尺度を用いることにより,簡便にスクリーニングできることが望ましい。また,精神科を受診した患者においても,客観的な症状評価を定期的に行うことは,患者の予後の改善につながることが報告されている。これはmeasurement-based care(MBC)と呼ばれるもので,評価尺度による症状評価を定期的に用いた治療を受けた患者は,そうでない患者に比べて有意に改善することが知られている2)。具体的には,標準的な治療を受けた患者群の24週後の寛解率が28.8%であったのに対し,症状評価を取り入れた治療を受けた群の寛解率は実に73.8%であったという驚くべき結果が得られている(図1)2)。その理由としては,症状評価を行うことで客観的な改善度がわかり,改善がみられない場合には早期に薬物変更に着手できることや,患者自らが治療に積極的になること,またアドヒアランスが向上することなどが考えられている。このように,うつ病治療において客観的な評価尺度を用いることは非常に意義のあることと考えられる。
本稿では,客観的うつ病評価尺度のゴールドスタンダードであるHamilton Rating Scale for Depression(HAM-D)とMontgomery Åsberg Depression Rating Scale(MADRS),および自記式評価尺度であるBeck Depression Inventory(BDI-Ⅱ),Zung Self-rating Depression Scale(SDS),Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)について説明する。
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.