増大号特集 精神科診療のエビデンス—国内外の重要ガイドライン解説
第9章 摂食障害
コラム
—Royal College of Psychiatrists—MARSIPAN(Management of Really Sick Patients with Anorexia Nervosa), Junior MARSIPAN
西園マーハ 文
1
Aya Nishizono-Maher
1
1明治学院大学心理学部
1Department of Psychology, Meiji Gakuin University, Tokyo, Japan
pp.663
発行日 2020年5月15日
Published Date 2020/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206090
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摂食障害に関するNICEガイドライン初版の発表後,英国では,神経性やせ症重症例の“underfeeding”(栄養補給不良)による死亡例が注目された時期があった。特に,摂食障害専門病棟や精神科病棟では対応できずに内科に依頼した事例に死亡例があることが問題とされた。内科でも精神科でも再栄養症候群の危険性がよく知られるようになり,栄養補給に慎重すぎる場合があることなどが原因だと考えられた。これを踏まえ,英国精神医学会の専門家グループが死亡例の情報を集め,内科とも討議した後に作られたのが,MARSIPAN(Management of Really Sick Patients with Anorexia Nervosa)であり,現在は第2版(2014年)となっている。小児科年齢用にはJunior MARSIPANがある。栄養補給不良だけでなく再栄養症候群についても記述がある。通常,ガイドラインの作成は,治療効果のあるものを探す視点で作られるが,死亡例を詳細に検討し,経過を悪化させた要素を提示することも重要であろう。日本国内でも,死亡例の情報の集積と経過の検討が必要だと思われる。
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