「精神医学」への手紙
「精神医学」58巻5号の「大うつ病性障害を併発した身体症状症にduloxetineが著効した1例」を読んで感じたこと
田中 恒孝
1
1松南病院精神科
pp.915-916
発行日 2018年8月15日
Published Date 2018/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205663
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この症例はめまい,ふらつき,動悸,四肢のしびれ,頭重感,全身倦怠感,胃部不快感,手の震えなど多彩な身体症状を示した63歳,女性例で,症状回復を求めて多数の医療機関を渡り歩き,この身体症状に遅れて2次的に大うつ病性障害を来した症例報告である。性格は内向的で他者配慮性があり,同様の病相を過去に3回繰り返している。この症例について,身体症状が先行して現れ,軽うつ状態が遅れて生じたことから,抑うつ状態は身体症状に対する反応性のものと考え2次的とみなしている。
上田7)はうつ病を従来診断に従って「心のうつ病(神経症性うつ病)」と「身体のうつ病(内因性うつ病)」とに分け,後者の特徴としてSchneider3),Huber1)や古茶2)のいう「刺激に対する非反応性」と「生気悲哀」を挙げている。生気悲哀は身体感覚,身体感情,自律神経症状の混然一体化した体から湧き出す不快な感情で,内因性うつ病を特徴づける症状であり,身体のいたるところに限局性,またはびまん性に発現する5,6)。Huberや曽根ら4)は内因性うつ病のきわめて軽いときは生気悲哀が前景に出て「仮面うつ病」の病像を示し,その発現部位に規定されて種々の身体科を受診することになると述べている。
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