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シンポジウム 気分障害治療の新たな展開
双極性障害の薬物療法―第一選択の気分安定薬としてのリチウムとバルプロ酸の比較を中心として
Pharmacotherapy for Bipolar Disorder:Comparisons between lithium and valproate as the first line mood stabilizer
岡本 泰昌
1
Yasumasa OKAMOTO
1
1広島大学大学院精神神経医科学
1Department of Psychiatry and Neurosciences, Hiroshima University, Hiroshima, Japan
キーワード:
Bipolar disorder
,
Pharmacotherapy
,
Lithium
,
Valproate
,
Suicide
Keyword:
Bipolar disorder
,
Pharmacotherapy
,
Lithium
,
Valproate
,
Suicide
pp.1347-1354
発行日 2006年12月15日
Published Date 2006/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100813
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はじめに
これまでに行われた長期経過に関する研究から,双極性障害は,再発の危険性が高いこと,病相が頻発化したり慢性化したりという難治例も少なくないこと,病相期のみならず間欠期においても社会生活機能が大きく障害されること,自殺完遂率が高いことなどが明らかにされている3)。したがって双極性障害の治療は,急性期だけでなく維持療法期も含めた長期的視点に立った治療選択をする必要がある。
双極性障害の治療を組み立てていくうえで薬物療法は重要な位置を占めているが,大うつ病を対象とした抗うつ薬のRCT(無作為化対照試験)と比べて,双極性障害のみを対象としたRCTは50報以下と少なく,特にプラセボとの比較を行った研究はさらに少ない。さらに,これらのRCTはいくつかの報告を除いてサンプルサイズが小さく,結果の解釈に統計学的な限界があることが指摘されている33)。また,双極性障害の薬物療法に関する知見は,気分安定薬のなかではリチウムに関する研究が多く幅広いが,その他の薬剤については十分な検証は行われていない。また,双極性障害の病相に関して,躁病相に対する知見は比較的多く得られているが,うつ病相や維持療法期を対象とした研究は十分得られていない。すなわち,現時点では双極性障害の薬物療法に関して十分に検証された知見は多くない状況にある。
本稿では紙面に限りもあることから,双極性障害の薬物療法の根幹をなす気分安定薬について,近年のさまざまな治療ガイドライン4,41,49,56)で第一選択薬として取り上げられているリチウムとバルプロ酸に焦点を絞り,両薬剤の有用性や限界について考えていきたい(表)。
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