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はじめに
てんかんは有病率が1%に近く,頻度の高い精神神経疾患である。てんかんの主症状であるてんかん発作は抗てんかん薬による薬物治療が基本となる。長年,部分発作に対するcarbamazepine(CBZ)と全般発作に対するvalproic acid(VPA)がてんかん薬物治療のゴールドスタンダードだった。しかし,1990年代以後,海外では新世代抗てんかん薬(以下,新規抗てんかん薬)が次々に上市され,抗てんかん薬の治療戦略が変化しつつある。本邦では海外と比較して新規抗てんかん薬の承認・販売が遅れてきた。この遅れはドラッグラグと呼ばれ,長年大きな問題とされてきたが,2006年以後,多くの新規抗てんかん薬が使用可能となり,ようやく欧米の状況に追いつきつつある。本邦もてんかんの薬物治療の転換期を迎えたと言える。
ところで,本邦では長年成人てんかんの治療は精神科医が担ってきた。しかし,近年,その役割は神経内科医や脳外科医へ移りつつある。精神科医がてんかん患者の診療にあたる機会が減り,従来薬でのてんかん治療に精通している精神科医も,新規薬による治療の経験が少ないかもしれない。一方,最近てんかん診療にかかわりだした神経内科医や脳外科医にとって,もはや新規抗てんかん薬が薬物治療の基本となっている。ところが,新規薬の一部は精神面に対するネガティブな影響が大きいことが分かってきた。今後,てんかんを専門としない精神科医も,逆説的に,(精神症状を持つ)てんかん患者の診察を引き受ける機会が増えると考えられる。その際,必要となるのは新規抗てんかん薬を追加するための知識より,減量・中止するための知識かもしれない。いずれにしても,新規抗てんかん薬を含めたてんかん治療についての基本的知識は精神科医にとって必須のものと考える。
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