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明治35年4月に発足した日本神経学会(現在の日本精神神経学会)は同時に機関紙である神経学雑誌(現在の精神神経学雑誌)を刊行した。この雑誌は精神病学,神経内科学,心理学,法医学などの領域の原著,実験例を掲載し,精神科医や神経内科医らの会員相互の情報交換に絶大な貢献をするとともに,ドイツ語に翻訳され,欧米の雑誌に掲載されていたといい,わが国の研究業績を世界に発信する媒体としての役割を果たしていたとのことである。内村祐之・元日本精神神経学会理事長の言によれば,第二次世界大戦前までは相当の内容を保っていたが,昭和20年代後半以後になると学位論文の掲載誌の様相を呈し,臨床医家に必要な知識の普及をはじめとする情報交換の不足が目立っていたという。大学や研究所に勤務する者と精神科病院に勤務する者とが日常臨床の経験を語り合える共通の広場を念頭に置いた,新たな雑誌の発刊の必要性を痛感していた有志が医学書院の理解と協力を得て,雑誌「精神医学」1巻1号を刊行したのが昭和34年1月であり,この度平成30年1月に60巻1号を発刊できた。先人の並々ならぬ努力と出版社の英断,何より執筆者,読者の方々のお蔭で今日に至ったことは誠に感謝に耐えない。
本誌の発刊後,精神医学の各専門領域の学会が多数設立され,それぞれ学会誌を刊行し,また,各出版社が複数の精神科領域の雑誌を刊行するようになっているが,本誌は創刊の意図を堅持し,臨床に密着した「研究と報告」「短報」などの原著を中心に掲載し,「展望」では,重要なトピックスを第一人者が分かりやすく解説し,また,年に数回,時宜にかなった特集,シンポジウム,オピニオンを掲載し,精神科医の臨床の情報交換の広場の役割を果たしてきた。また,「古典紹介」や「継往開来」などのシリーズでは,我々の脳裏から忘れ去られようとする往年の優れた研究者の思想や臨床的実践の紹介を行ってきた。
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