Siesta
IOL挿入手術について最近考えること
沖波 聡
pp.105
発行日 1993年10月30日
Published Date 1993/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410901900
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学会のビデオ講演が大盛況で,上手な人の手術ばかりを見てしまうために,IOL挿入手術はcontinuous curvilinear capsulorhexis (CCC)をして超音波水晶体乳化吸引術(PEA)をしなければ時代遅れだという雰囲気に,自分自身を含めてなっているのではないだろうか。しかし,すべての症例がCCCとPEAで片づくわけではないと思う。水晶体核が硬いのに自分の技量を考えずにPEAに挑戦して,後嚢破損,硝子体脱出をきたすことが増え,水晶体核を硝子体内に落としてしまったら,後始末は硝子体手術のできる病院に押しつけて涼しい顔という術者がいることを見聞きする。まず安全確実な手術を行い,自分の技量を考えながら段階的にレベルアップを目指すのが大切だと思う。
小さなCCCでは都合の悪いことがある。糖尿病網膜症への汎網膜レーザー凝固(PRP)が,小さなCCCで前嚢が混濁しているために十分に行えないことがある。将来PRPが必要になると予想できる症例には,can opener法で大きく前嚢切開をして7mm径のIOLを挿入しておいたほうがよい。白内障術後に網膜裂孔が発見された時に,小さなCCCによる前嚢混濁のためにレーザー凝固ができないこともある。また,網膜剥離が起こっているのに裂孔を発見できないこともある。“白内障手術を専門にしているから,あとのことは知らない”“CCCとPEAで‘ええかっこ’をしたい”というのでは本当の医療とはいえないのではないだろうか。
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