特集 精神科臨床にみる家庭・家族の現在—何が変わり何が変わらないのか?
特集にあたって
飯森 眞喜雄
1
Makio IIMORI
1
1いいもりこころの診療所
1Iimori Kokoro Clinic, Tokyo, Japan
pp.743-744
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205226
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精神分析はさておき,第二次世界大戦をはさんで米国を中心に精神疾患を家族内人間関係の見地から解明しようとする研究が広まり,「家族研究」として1970年代まで盛んに行われた。日本でも当時の本誌には家族研究の論文が多く掲載されている。有名なものとしてFromm-Reichmannによる「統合失調症を生む母親schizophrenogenic mother」やLidzによる「分裂した/歪んだ夫婦marital schism/skew」,Batesonらによる親子間コミュニケーションの「二重拘束double-bind」やWynneらの「偽相互性pseudo-mutuality」など主に統合失調症関連のものが,そして家族研究を元にして後に「反精神医学」の運動に立ったLaingらのものがある。これらは今日の目から見た当否は別として,精神疾患を「内因」や「個人内部性:intraindividuality」から解き放ち,家族の在り方や家族内力動,ひいてはそれに影響を与えている社会変動という外の要因に精神科医の目を向けさせたという点では多大な功績があった。
こうした研究は主に力動的な見地に立つほか社会学など他領域からの視点も入って行われてきたが,その後はいうまでもなく,「家族研究」というとすっかり遺伝生物学にシフトしてしまった(そもそも家族研究は遺伝生物学から始まったのだが)。
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