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連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ
セネストパチー
Cenesthopathy
矢部 辰一郎
1
,
飯森 眞喜雄
1
Tatsuichiro YABE
1
,
Makio IIMORI
1
1東京医科大学病院メンタルヘルス科
1Tokyo Medical University Department of Psychiartry, Tokyo, Japan
キーワード:
Cenesthopathy
,
Cenesthesie
,
Somatoform disorder
,
Delusional disorder
Keyword:
Cenesthopathy
,
Cenesthesie
,
Somatoform disorder
,
Delusional disorder
pp.218-220
発行日 2012年2月15日
Published Date 2012/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102109
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はじめに
セネストパチー(cenesthopathy:体感症)とは,身体疾患や医学的異常所見がないにもかかわらず「内臓に穴があいている」「頭の中がネトネトする」などといった奇妙な体感(cenesthesie)の異常を訴える病態像を表すものとされ,1907年にフランスのDupréとCamusが症例報告に用いたのが始まりである。他に特記するような症状もなく,セネストパチーという病名以外には適合するような疾患が考えられず,慢性に経過する患者がいる一方で,さまざまな精神疾患の一症候として同様の体感異常を呈することも多い。本邦では,体感異常のみを呈するものを「狭義のセネストパチー」,統合失調症や気分障害などの患者で体感異常を訴えるものを「広義のセネストパチー」とする保崎12)の分類が一般的で広く受け入れられている。
しかし実際には,セネストパチーを検討する時には,それを狭義にとるのか広義にとるのかという線引きの問題や,皮膚寄生虫妄想症などの近似の概念との区別の難しさがあり,体感異常というテーマをめぐって複雑な議論がなされてきた。そこでそれらの見解を整理して考えてみたい。
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