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筆者らはこの度,独立行政法人国際協力機構(JICA)より青年海外協力隊として,ガボン共和国唯一の精神科病院である国立メレン精神衛生センター(Centre Nationale de Santé Mentale de Melen,以下メレン精神科病院と記す)に精神科ソーシャルワーカーとして派遣されていた鐙景子氏の知己を得て,現地を視察する機会を得たのでここに報告する。
ガボンは中部アフリカに位置し,面積は日本の7割ほどで,国土の大部分は手つかずの原生林が広がり,人口159万人,その4割が15歳未満である。85%が都市住民で,識字率86%,6〜14歳の就学率96.5%と教育レベルは高い。石油,マンガン,森林資源が経済の三本柱で,実質的にガボン民主党の一党独裁であるが,政情不安や内戦を抱える周辺国に比べ明らかに社会状勢が安定している。CNAMGS(Caisse Nationale d'Assurance Maladie et de Garantie Sociale;健康保険・社会保障公庫)という国の健康保険制度があるが,精神科医療に費やされるのは,国の全保健医療予算の1%に過ぎず,精神科医は4名しかいない。そのうち1名は軍病院に勤務し,1名はプライベートクリニックのオーナーでCNAMGSに勤務し,メレン精神科病院にかかわるのは2名のみである。うち1名は元院長のMbungu医師だが,今は保健省による国の精神保健計画(WHOも関与している)のディレクターの仕事が主であり,もう1名は定年間近であまりやる気はなく,病院のストライキに乗っかっていた。つまり,メレン精神科病院において臨床活動に十分従事できる精神科医は1人もいないのであった。
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