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ここ数年,精神医学と神経学の境界領域にまたがる疾患が注目されるようになってきている。いくつかの例を挙げてみよう。脳炎と緊張病の鑑別は古くからの重要なテーマだが,2005年Dalmauらの抗NMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体脳炎の抗体を発見したとの報告は画期的なものであった。筆者らも経験があるが,この疾患は思春期から20歳台の女性に多く,前駆期の精神症状は統合失調症と区別が難しい。しかも抗精神病薬を投与されてしまうと,その後の緊張病症状は悪性症候群とも区別が困難になる。身体管理を十分にしなければ死に至ることもあり得るが,それを過ぎれば予後は良好である。この疾患は昔言われた致死性緊張病に相当するものではないかと思われる。
レビー小体型認知症は,昨年からドネペジルが保険適応になるとともに,MIBG心筋シンチグラフィに加えてドーパミントランスポーターによる核医学的診断が高い精度でできるようになってきた。以前は,幻視があるからとすぐにハロペリドールなどを投与されて悪化する例もよくみられたが,最近は少なくなっているようである。それでもレビー小体型認知症をアルツハイマー型認知症と診断して加療し,パーキンソン症状が出現した際に,抗コリン剤を投与して,幻視が悪化して紹介される例はまだみかける。より難しい問題としては,レビー小型型認知症では,前駆状態としてうつ病がみられ,途中から誤認や幻視などが明らかになる例も多い。いわゆる,うつ病性仮性認知症もレビー小体型認知症が多く含まれている可能性があり再検討が必要である。また,緩和ケアや一般科でも,レビー小体型認知症がせん妄として,ハロペリドールを投与され,悪性症候群に陥っているが見逃されている例もあり得るだろう。
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