Japanese
English
短報
先天性聾者における幻聴体験
Auditory Hallucinations in a Prelingually Profound Deaf
野本 文幸
1
,
町山 幸輝
1
Fumiyuki Nomoto
1
,
Yukiteru Machiyama
1
1群馬大学医学部神経精神医学教室
1Department of Neuropsychiatry, Gunma University School of Medicine
pp.1209-1212
発行日 1985年10月15日
Published Date 1985/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204028
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I.はじめに
言語を聴覚的に体験したことのない先天性聾者が健聴者と同様に幻聴を訴えることは,幻聴の成因を考える上で重要である。しかし,これまで先天性聾(born deafness,congenital deafuess,early total deafness,prelingually profound deafness)の幻聴に関する報告は極めて稀である。筆者らの集めえた文献の中で具体的な幻聴の症例報告は,Altshulerら1)(2例),Basilier4)(1例),Remvig8)(4例),Rainerら7)(5例),Critchleyら5)(6例)、浅野3)(2例)らの報告だけである。これらはBasilier4)の1例が昏迷性抑うつ反応の診断がある以外,全て精神分裂病の症例である。聾の精神分裂病患者の中で幻聴を示した症例の頻度に関しては,Raincrら7)が57例中16例に,Altshulerら2)が57例中17例に(この2つの報告は同一患者を対象としたものと考えられるが2報告で1例だけ異っている),Critchleyら5)が12例中10例に,Evansら6)が13例中3例に認められたことを報告している。
最近筆者らは,精神分裂病に特徴的な命令する声の幻聴や第三者間での会話性幻聴のほか,非言話性幻聴,思考吹入,身体的被影響体験,幻視,独語,〈独り手話〉,心気症状など多彩な症状を示した先天性聾者を経験した。その報告を行うとともに,先天性聾者の幻聴の成因について思考障害の重要性,ならびに従来の報告では記載されていない僅かの残存聴力が重要であることを論ずる。
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