巻頭言
精神科医と臨床神経学
池田 久男
1
1高知医科大学神経精神医学教室
pp.4-5
発行日 1984年1月15日
Published Date 1984/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203695
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Gricsingerの思想やNeuroseの語源を持ち出さなくとも,精神疾患の臨床に神経学の知識や経験が必要であることは今更説明を要しないことである。精神神経学会とは別に,わが国に神経学会が誕生して25年が経過したが,この間に神経学会は順調に発展し,診療面でも「神経内科」,「神経科」の名称のもとに専門診療科としての地位が確立している。こうした専門化の傾向,とくに認定医制度の確立がわが国の臨床神経学の進歩に大きく貢献したのは間違いのない事実であるが,同時に精神科医が教育や日常診療において神経疾患に接し,これを勉強する機会が少なくなったのも事実である。
最近になって,将来精神科医を目指す若い医師達の問で臨床神経学の知識と経験の必要性が再認識され,現状の臨床神経学の研修が不充分であることを卒直に認める意見をよく耳にするようになった。すでに大学によっては精神科の卒後研修プランに一定期間の神経内科での研修を義務づけたり,奨励しているところもあるが,必ずしも満足できる成果があがっているところばかりではないようである。同様の事情は米国においても持ち上っているようで,最近になってKaufman “Clinical Ncurology for Psychiatrics”に代表されるような精神科医を対象とした臨床神経学の単行書が相次いで出版されている。
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