Japanese
English
研究と報告
Balint症候群の1例—とくに出現・消褪過程について
A Case of Balint's Syndrome: With refercnce to clinical course
松永 哲夫
1
,
大山 繁鈴
1
,
木高 秋
2
,
佐藤 真弓
2
,
丸野 陽一
2
,
中村 茂代志
2
Tetsuo Matsunaga
1
,
Shigeru Ohyama
1
,
Takashi Suzuki
2
,
Mayumi Satoh
2
,
Yohichi Maruno
2
,
Shigeyoshi Nakamura
2
1熊本大学医学部神経精神医学教室
2飯塚病院神経精神科
1Department of Neuropsychiatry, Kumamoto University School of Medicine
2Iizuka Hospital
キーワード:
Balint's syndrome
,
Clinical course
,
Electroencephalographic changes
,
Korsakoff's syndrome
,
Unilateral spatial neglect
Keyword:
Balint's syndrome
,
Clinical course
,
Electroencephalographic changes
,
Korsakoff's syndrome
,
Unilateral spatial neglect
pp.1091-1098
発行日 1983年10月15日
Published Date 1983/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203659
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(1)Balint症候群の出現・消槌過程を報告した。症例は58歳,男性。"字が曲がる","車庫入れの時にぶつける"などの軽い空間知覚障害で始まり,緩徐に進行し,精神性注視麻痺や視覚性注意障害の前段階と思われる諸症状を経て,定型的なBalint症候群へと移行した。Balint症候群は約2ヵ月間つづき,その後徐々に軽快したが,3主徴のうち視覚失調だけが残り,他の2症状とは異なる経過を示した。
(2)基礎疾患としては脳血管障害が考えられ,責任病変としては症状の進行と並行してCT上に低吸収域が出現した左頭頂・後頭領域,および着衣失行や左側無視の傾向から右頭頂・後頭領域の障害が推測された。
(3)Balint症候群の出現・消褪過程を検討した結果,より本質的な症状は視認知の障害,すなわち視覚性注意障害と思われた。
またBalint症候群と空間知覚障害とは相互に移行しうるものであり,前者は後者の最大表現にすぎないと考えられた。
(4)Balint症候群と同時期にKorsakoff症候群と脳波の基礎律動の徐波化が認められたことから,本症候群の発現には両側頭頂・後頭領域のみならず,前頭葉,辺縁系,網様体賦活系などの関与している可能性について若干の考察を加えた。
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