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皆さん,以上が解釈妄想病の基本的諸症状である。これらだけで通常は精神病は充分に構成される。前述したように,場合によっては副次的ではあっても顕著で,これと同じ数だけの解釈性精神病の亜型を構成することになる要素が基本的症状に結合することがある。これらの余分な症状を頻度順に挙げると次のようになる。1.空想性虚言〈作話〉(fabulation)ないし物語(récit),2.誤認(fausse reconnaisance)と記憶錯誤(paramnesie),3.幻覚。
空想性物語はしばしば解釈性精神病をあざやかに彩る。これらは解釈を後方に押しやって,これを犠性にしてしまってまでも発展することがある。Dupré氏によって非常に見事に記載された空想妄想病(délire d'imagination)に近似しているこの虚言〈作話〉妄想は血統加害者ないしこれより適切な名である血統解釈妄想病者(interprétateursfiliaux)と呼ばれている誇大妄想患者の一部によく観察される。彼らは自分たちの本当の親を否認して養い親だと称し,名門の生れであると主張し,乳児期に身代わりにされた犠牲者だと信じ込んでいる。この妄想の体系化では複雑さと同時に正確さが顕著になる。作話者(le fabulateur)は彼の物語を平然と確信を持って語る。彼の話では家系について語られるがそこではどんな奇妙なことでもごく簡単に,異論のない現実として出現する。彼は全てに渡って,輝やかしい挿話や,英雄的手柄話をでっち上げる。彼が喜んで詳細に語るのは奇妙な冒険談であり,その幼少期はこれで満たされていたと言う。彼は不可思議な旅行の顛末を記載する。彼らの大部分は,メロドラマ的見せ場を作り,この中で彼らの出生の秘密が解き明かされる。Ballet氏が発表した症例であるJules Grévyの偽息子は死んだ彼の母親が彼にその父親の名と妊娠したいきさつをどのようにして明かしてくれたか語っている。偽王太子,偽王女のこれら幾人もの作話者が逸話の中に姿を残している。Nanndorffはその最も極立った例である。一部の者は彼らの解釈性精神病に合併した虚言症に属する偽りを承知の上でのでっち上げを,その心から信じ切った作話につけ加えたりする。とはいえ全ての者が彼らの権利回復の理由が正当であることを心から信じており,この燃えさかる信念のために彼らに数多くの味方がひきこまれることになる場合が時にはある。
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