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本年4月9日から11日まで世界精神医学連合(WPA)と日本精神神経学会との共催による地域シンポジウムが国立京都国際会議場で開かれたことはまだ諸兄の記憶に新しいことかと思う。初めの予定よりはやや下回わったが,それでも850余名の参加者を得て無事会議を終了することができたことは世話役を仰せつかった私としてまことに感慨無量であり,ご協力いただいた方々にこの紙面を借りて心からお礼を申し上げる次第である。今回のシンポジウムの成果については賛否さまざまな評価があると思われるし,また当事者として喧伝すべきことでもないので他の機会にゆずるが,このシンポジウムを通して私自身がつよく感じたいくつかのことをここに誌してこの欄の責を果したいと思う。
最近は国際会議,国際交流がとみに盛んであって,つい昨年の9月にもわれわれの隣接領域である神経,脳波・筋電図,てんかんなどの大きな国際学会がわが国で開かれた。また国外の学会には毎年多数の人々が参加しているのが現状である。しかし,何といってもこれら隣接領域の学会では,精神医学本来のというか,われわれ自身のホームグラウンドであるという実感を味うには乏しい恨みがあった。その意味で今回のシンポジウムは,規模こそは必ずしも大きくはなかったが,確かにわれわれのものであるという手応えがあったように思う。戦後わが国で開かれた精神医学の国際的会議としては1963年に行われた米国精神医学会(APA)との合同の学会があるが,それ以来ほとんど20年ぶりでもあり,WPAとの関係では日本精神神経学会がWPAに加盟して以後,初めてであるから,われわれの学会の長い国際的孤立を今更のように考えさせられるものがある。開会式終了後,カナダのLin教授が日本の学会もこれを機会によくなるでしょうといわれた言葉を思い出すのである。
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