巻頭言
学生教育におもう
十束 支朗
1
1山形大学医学部精神神経学教室
pp.856-857
発行日 1981年9月15日
Published Date 1981/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203300
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教育には夢があり,それが確かなビジョンにつながらなければならない,と日頃自らにいいきかせている。しかし現実は厳しい。例えば国家試験の合格率を高める,とかすぐ役に立つ臨床医の育成などという問題がすぐ目の前に示されると,悠長にかまえてはいられなくなる。そのように揺れ動く中で,精神医学教育について,とくに新設医学部あるいは医大のかかえている2〜3の問題について考えてみたい。
医師養成の大幅な増員計画から一県一医大を目ざして国立大学の医学部あるいは医科大学が15校(一足先の秋田大学を入れると16校)新設された。ここでは伝統もないかわりに,旧来のカリキュラムにとらわれずに,独自のカリキュラムを計画し実行できるように思えるが,なかなか思い切った事ができない現状ではある。今まで講座と診療科が直結し,それぞれが自分の縄張りを固執してきたのに慣れきっていることが1つの大きな隘路になっていよう。一方,専門野の分化がどんどん進み,基礎と臨床の間もますますかけ離れていることも,新しく講座間の壁をとり除いた統合的なカリキュラムを組み立てる障害になっているとおもう。
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