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I.はじめに
各種の感覚刺激で誘発されるてんかん,いわゆる反射てんかんは,てんかん発作の発現機序を知る好個の研究対象として,これまで多くの研究者の関心を集めてきた3,4,7)。そのうち,視覚刺激で誘発されるてんかん,すなわち視覚性てんかんvisual epilepsyはもっとも高頻度にみられるため,数多くの報告がある5,13,30)。この視覚性てんかんの補助診断として,ストロボスコープ(ストロボ)の白色閃光点滅刺激(閃光刺激)で誘発される発作波,すなわち光けいれん反応photoconvulsive responseが,現在でもきわめて重要視されている。JeavonsとHarding5)は,光けいれん反応がてんかんの5%に出現するという。ここで注意したい点は,光けいれん反応の存在がただちに視覚性てんかんを意味するものではないことである。なぜなら,てんかんに限って考えると,かかる症例はいわゆる光過敏性てんかんphotosensitive epilepsyではあっても,視覚刺激で臨床発作が誘発されていない症例もその中に含まれるからである。しかし,光けいれん反応が視覚性てんかんにもっとも高率に認められることから,光けいれん反応の分析に基づいた視覚性てんかんの研究は,一つの重要なアプローチと考えられる。著者に与えられた主題は,いわゆる光けいれん反応を指標として,視覚性てんかん発作の発現機序と治療を,臨床脳波の立場から考察しようとするものである。
はじめに,視覚性てんかんの脳波賦活として重要な,われわれが行なっている独自の方法を紹介し,ついで賦活脳波所見に基づいた視覚性てんかん発作の発現機序,その予後と治療について述べる。視覚性てんかんに関する文献的展望とわれわれの研究の紹介は,著者の1人である高橋がすでに本誌26,30)で行なっており,今回はその後に得られた知見を中心に論じたい。なお,視覚性てんかんと類似の用語として,光過敏性てんかん,光原性てんかんphotogenic epilepsy,眼性てんかんophthalmic epilepsy30)などがある。しかしここでは,視覚性てんかんの呼称を統一的に用いる。
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