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I.はじめに
1970年に著者は,ある種の幾何学的図形を凝視して欠神小発作が誘発されるいわゆる図形過敏てんかん17)の1例を経験した72)。あまりにも印象的なその臨床・脳波所見に興味を覚え,以来我々は,各種視覚刺激,更には眼瞼・眼球運動(以下,眼球運動と省略)による脳波変化の分析的研究を重ねてきた74〜79,85〜87,92,93)。点滅光注1)だけでなく全体野(Ganzfeld)92),赤色光74),図形73,78)などの視覚刺激に加えて,眼球運動85)(視覚刺激と眼球運動を,以下,眼性刺激と一括する)によっても発作波の誘発されることが稀ではなく,我々は従来の脳波賦活法,特に固定化したともいえる開・閉瞼賦活とストロボスコープを用いた閃光刺激賦活58)に,どうしても疑問を抱かざるをえなかった。これらの賦活法に代って,我々は新たに眼性刺激による脳波賦活(以下,眼性賦活と省略)80〜82)を案出した。眼性賦活は,視覚感覚賦活と眼球運動賦活の2つから成り立っている。視覚感覚賦活には,脳波賦活のための視覚刺激装置(以下,視覚刺激装置と省略)108)を用い,開瞼した一定の状態で15c/secの点滅,赤色光,図形の3つを個々に,または組み合わせて行なう脳波賦活である。眼球運動賦活は,暗室での開・閉瞼と開瞼した状態で各方向への眼球運動による脳波賦活である。特に視覚感覚賦活のうち,赤色点滅刺激とついで点滅図形刺激は,閃光刺激賦活に比較しても優れた発作波賦活効果を示す79,84)。眼性賦活で発作波が誘発された症例をてんかんに限ってみると,それにはいわゆる光原性てんかん注2),テレビてんかん,閉瞼で誘発されるてんかん,眼球偏位性てんかん,2次性読書てんかんなどが含まれる。しかし,これら症例を眼性賦活という分析的脳波賦活の立場からみると,上述した従来のてんかんの分類はあまりにも便宜的,かつ一面的見方に過ぎるように思われてならない。我々は,眼性賦活という脳波賦活法に立脚した,眼性てんかんという反射てんかんの一群を,新たに提唱したい。それは,眼性賦活効果から(1)視覚感覚型,(2)眼球運動型,(3)混合型,の3型に分類される81)。
本稿の主題である眼性賦活と眼性てんかんを紹介する前に,特に眼性てんかんを提唱するに至った理由をより鮮明に浮き彫りにするため,反射てんかんの一群である光原性てんかんとそれに近縁なてんかんの展望を試みたい。
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