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Ⅲ.
以上報告した病歴からどんな問題が生じてくるのであろうか? あるいは,そこからなんらかの結論を導き出してもよいのだろうか? まず次の問いに答えておかなくてはならないだろう。それぞれ2つの症例によって示されたこの2つの経過型には,何らかの規則性が見られるであろうか,つまりこれらが互いに独立したものだと―もちろん,それは疾患としての独立性である必要はないのだが―考えてよいのだろうか。それともこれらはただ偶然にできあがったものであって,何らの相互関係ももたないものなのだろうか。そこで我々はまず,これらの経過型をほかの「混合精神病」,つまり2大内因性精神病が同時に,あるいは継時的に出現する経過と比較してみなければならない。私自身の経験からいうと,私はこれまでに上述の4例を含めて総計24例の混合精神病像を長期間にわたって観察することができた。ただしその内の6例は,観察期間が5年未満であり,最終的な判断を下すにはあまりにも短かすぎるので,ここでは除外しておきたい。残りの18例については,多くは初発以来数十年間にわたる経過がはっきりしており,その内の9例,すなわち男性6例,女性3例は,分裂病性の基本症状の上に躁うつ病相が不規則に出現してくるもの,つまり症例1と2で述べた形に相当するものである。これらの病像と経過は,個人差を度外視すれば,若干の点において瓜二つといえるほど極めてよく似通っている。ただ1つ,現在52歳になる元大学生の症例だけは経過がやや異っている。この患者は分裂病の遺伝負因をもち,無力型の体型で,才能があるにもかかわらず病前から自己中心的で小さな点にこだわる性格の持主であった。20歳のとき,過程性の緊張病性シュープがあり,その後も何回か緊張病のエピソードをもち,症例1,2と同様に交替性の気分変動も認められている。この気分変動は一部は反応性に誘発されたものであったが,これは患者が,自らの分裂気質や自閉的な自己過大評価のせいで満足できる職場がなくなってしまい,あちこちでいざこざを起こしたあげく,自分の気分変動を反応性のものと決めこんでいたのかもしれない。他の8例は互いによく似ていて,まとまった1つのグループをなしており,私の考えでは独立した1病型といえそうである。
残り9例の「混合精神病」(男7例,女2例)はすこしちがっていて,症例3と4はここに含まれる。病像や経過の多様性はこのグループではずっと大きく,個人差を考え合せても説明がつかない。このことをはっきりとさせるために若干の病歴の要点を引用しておく。
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