古典紹介
Friedrich Mauz—Die Veranlagung zu Krampfanfällen〔Georg Thieme Verlag, Leipzig, 1937〕—第1回
中内 雅子
1
,
五味淵 隆志
1
,
飯田 真
1
Masako Nakauchi
1
,
Takashi Gomibuchi
1
,
Shin Ihda
1
1東京大学分院精神神経科
1Department of Psychiatry, University of Tokyo Branch Hospital
pp.769-777
発行日 1980年7月15日
Published Date 1980/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203128
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序論
素質という概念は,てんかん領域では薄幸な役割におしやられていた。疾病の外因と内因,後天性因子と体質的因子を共通の方法で考察することや,個々の疾病現象を最も異なった諸側面から原因的にとらえることは,医学の他の領域では随分前から進んでいたのに,てんかん診断学においては,素質要因は一つの補助手段にまで成り下がってしまった。他の原因が見出されないときに,仕方なくそれを引き合いに出さねばならなかった。しかし,ある何らかの外的損傷が見出されると,素質要因について考えるということはなかった。外因と内因の対比はこのような方法で組立てられていたが,その排他性のため生きた疾病現象に対応させることは不可能であったし,てんかんの現実に近い診断学を困難にせざるを得なかった。
もしも,症候性てんかんと真性てんかんをこのように峻別するときに,せめて両群が同価値に取扱われていたならば!現実には症候性〔てんかん〕訳注)を思わせるあらゆる示唆は肯定的に評価されたのだが,素質要因は概して除外によって,ただ否定的に確定されるだけであった。いずれにせよ,GruhleもBumkeの精神医学全書への寄稿の中でそう述べている。
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