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1979年9月3日から6日までの間,第7回国際神経化学会が,イスラエルの首都エルサレムにおいて,ヘブライ大学Gatt教授を会長として開催された。この学会に筆者は参加する機会を得たので,その印象を記してみたい。9月3日午前9時より型通りの開会式が挙行され,引続いて,この学会に先立って各地で開催されたSatellite Symposiumの概要が,各シンポジウムの組織委員長から紹介された。それらの主題は,脳の老化と痴呆,組織培養における神経組織の生化学的発展,精神障害における酵素と神経伝達物質,網膜の神経化学,エンドルフィンとニューロペプチドの調節,神経疾患と神経系への遺伝的接近などであった。
学会は3日午後から6日まで,各日ともびっしりつまったプログラムによって進行され,6日午後8時30分からの盛大な閉会式で終了した。表1に学会規模のあらましをかかげる。各国の出題を比べると,米国からの演題が最も多く,特にシンポジウム講演の半数近くが米国の研究者によるものであった。現在の神経化学における米国の研究者層の厚さや研究の質の高さを痛感させられた次第である。やや意外に思われたのは,フランスが主催国のイスラエルを追い抜いて,米国に次いで多数の演題を提出していることである。しかし,シンポジウムになると,イギリス,西独がフランスを上廻っているところから,かならずしもフランス神経化学が米国に次いで高い水準とはいえないようである。一方,わが国は,西独,イタリー,カナダなどに次いで第8位に止まった。今回は政情不穏な中東地区での学会ということもあり,わが国の相当数の研究者が敬遠されたと推察されるが,次回にはより多数の演題が提出されることを期待したい。同時に,また,国際会議で正当な評価を得られるよう,われわれが常日頃から研鑚に努めねばならないと考えさせられた。表2に本学会の発表演題を筆者なりにまとめたが,研究者の興味がどの主題に集まっているかが明らかになって面白い。活性アミンが一番人気があり,次いで蛋白質,脂質,アミノ酸の順に注目を集めていることがわかる。精神・神経疾患に関する演題も多くはないが,一定数の研究者に興味が持たれている。これを1979年度の第22回日本神経化学会の演題提出と比較してみると(表2),活性アミン,蛋白質,脂質,アミノ酸が上位を占めていることは,国際的な趨勢と大差がみられない。しかし,精神・神経疾患の演題に限った場合には,やや少な目であるような印象を受ける。
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