Japanese
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特集 睡眠研究—最近の進歩
小児の睡眠をめぐる諸問題
Development in Sleep, Normal and Abnormal
瀬川 昌也
1
Masaya Segawa
1
1瀬川小児神経学クリニック
1Segawa Neurological Clinic for Children
pp.491-499
発行日 1980年5月15日
Published Date 1980/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203095
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I.はじめに
小児は発達過程にあることが特異的であり,小児期の睡眠を論ずる上にも,この特異性を考慮する必要がある。
生物の発達過程にみる基本的行程は,個々の細胞群あるいは系の固有のパターンによる時間的空間的に連続した発達に加え,相異なる系の統合が加わり,より複雑な機構へと発展する。これを中枢神経系にあてはめると,空間的な神経伝達路の発達に伴い,時間的には,各神経細胞(群)の固有の活動—抑制サイクル,および,それらが統合される過程であり,早期に成熟する脳幹神経系に対する遅れて発達するより上位の中枢神経系からの抑制機構の発達を表わすといえる。
一方,睡眠諸現象にみる発達の過程は,個々の現象が持続性に出現する状態から,活動・静止を繰り返すパターンに調整され,次いで,おのおの別個の現象が互いに相関を関連させ,より統合された段階へと進む。これは,発達段階における睡眠の研究が,生体の発達をより適確に表現し得ることを示唆している1)。特に,睡眠の諸要素が脳幹,中脳の神経核により直接的に支配されていることを考えると,睡眠各要素の発達を検索することは,それを支配する神経系の発達とともに,それに抑制性の統御を与えるより中枢の神経系の発達をみることとなり,それぞれの機能の正常,異常,また,発達の良否を判定するに有力な機会を与えてくれる。
本項では,睡眠諸要素の発達およびその異常を,文献的に考察し著者等の知見を加え概説を試みた。
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